「認める」「認められる」を自信や安心に
子どもたちの“やってみたい”“こんな風にしたい”を真ん中に、誰もが安心してすごせる、遊べる場所。
関川村の旧大島保育園にある「関川る〜む」を訪ねました。
学校でも家でもない みんなの居場所
関川る〜むは、国のこどもの居場所づくりに関する支援事業を村から受託した「一般社団法人えちごせきかわ四季の暮らし協議会」(代表理事・近美千代さん)が、学校になじめない子どもたちの居場所として開いた場所です。
地域の様々な人が関わっている運営元は、村の自然や人、歴史、風土とつながる住民参画型のイベントを続けてきていて、そんなノウハウも関川る〜むの随所に見ることができました。
とりあえず、みんなで集まろう「る〜むカフェ」
とても多機能な複合施設の関川る〜む。まずは主な機能を紹介します。
広い運動場だったホールは、多目的に使えるスペースになっています。小上がりや薪ストーブもあり、ちょっとした作業をしたり薪をくべることを体験できたりもします。普段、家ではなかなかできないことを、子どもたちはすぐに遊びにして楽しんでいるそうです。
ホールには子どもたちだけでなく、誰もが気軽に集える「る〜むカフェ」もあります。
カフェの主なメニューはコーヒー300円、オレンジジュース大人300円/子ども200円と、誰でも気軽・手軽にオーダーOK。大人がおしゃべりしたり、子どもが宿題したり、ゆったりと気ままにすごせる空間です。
寒い季節は、薪ストーブならではの太陽のようなぽかぽかとしたあたたかさや、木が燃えるいい匂いが心地よいものですが、子どもたちは薪をくべる(木を燃やして暖をとる)ことそのものも楽しいようです。大人だって楽しいですよね。
「プレイる〜む」で赤ちゃんもママもにっこり
赤ちゃんや小さいお子さん連れには「プレイる〜む」がおすすめです。
畳やおむつ替えスペースもあり、幼児用の玩具などで安心して遊ぶことができます。壁面の一角には、スタッフさんの友だち(大工さんたち)が手づくりしてくれた小学生用のボルダリングコーナーもありました。木壁にカラフルなホールドやスタンス(のぼる時つかんだり足をかけたりする突起)が配置されていて、ボルダリング入門によさそうでした。
使い込まれた黒板には、子どもたちが描いたと思われるかわいらしい絵が残っていて、なんだか気持ちが和みました。絵や文字を落書きで覚えたりして、すくすく大きくなっていくんですね。
防音OK&機材アリます 「スタジオる〜む」でリハしない?
「楽器の練習がしたい」というリクエストによってできたのが「スタジオる〜む」です。
防音バッチリのスタジオには、ドラムセットやギター・ベースアンプ、音響機材が完備されています。けっこう味のある機材です。エレキギターなどを持っていけば練習ができますし、録音や動画撮影にもおすすめ。人数問わず子どもから大人まで1時間500円というのも破格の設定で驚きました。
関川村にはガールズバンドも活躍していたり、長年アコースティックギターや様々な楽器の演奏活動を楽しむ方も多いです。この場所を起点に、村内外の音楽好きが交流したり、子どもと大人が音楽で交わったりできたら楽しそうですね。
スクリーンが活躍 「シアター・ギャラリーる〜む」で展示や上映を
創作品の展示や映写会ができる「シアター・ギャラリーる〜む」もありました。
園児がすごした陽あたりの良さそうなお部屋ですが、窓には暗幕カーテンがあり上映もバッチリ。大きなスクリーンが活躍します。
映像や資料を投影しながら人が集まれる場所ですので、講演会や研修会にも便利ですね。
売る人も買う人も子どもも大人も“毎度ありがとうございます” 「まいどる〜む」
「何屋さんですか?」と聞かれても答えようのない面白いお店が、こちら「まいどる〜む」です。
駄菓子や地元の木工品、地域のみなさんの畑からやってきたとれたて野菜、関川村産の山菜がところせましと並んでいました。まだまだ活躍できそうな古着や日用雑貨のリサイクル品も。関川る〜むに集まる人がいろんなものを持ち寄って、だんだんにぎやかになったお店ですね。
そして、そんなお店をなんでも遊びにしてしまう子どもたちがだまっているはずがありません。大人に混じり、自分たちの販売ブースをつくりました。並んでいるのは、手づくりのアクセサリーやしおり、使わないおもちゃなど、まさに雑貨屋さん。お会計は備え付けの箱で済ます無人販売です。売り場の管理、売上の管理など、壁にあたることもあるそうですが、遊びを通じて言葉だけでは学べないことにふれているんですね。
このほかにも地域のみなさんに大人気の「ふくふく」さんの手づくり弁当の販売や、季節の催しなどがゆったりと行われています。
「いい豆と悪い豆を選別する“豆より”をしていたら子どもたちがやってきて、作業に加わったことがありました。子どもたちは“ガチャ”と言って楽しそうに選別していましたよ」。近さんからはこんなほっこりするエピソードを聞かせてもらいました。豆よりや紫蘇の葉もぎ、柿の処理、薪の管理といった、昔の農山村には当たり前にあった手仕事を関川る〜むでは今も垣間見ることができるんですね。じんわりと伝わる暮らしの風景が、とても素敵だと感じました。
お泊まり会、トークイベント、ライブイベント、上映会、お遊戯会、展示会、これまでに子どもたちの希望や集う人の希望から、多種多様な催しが企画されました。これからもみんなの“やってみたい”に寄り添い、いろいろな催しも企画していくそうです。関川村在住の人に限らず、誰でも利用できる関川る〜むですので、少しでも興味を持った方は一度のぞいてみてはいかがでしょうか。
「大人主導になっていないか、と時々振り返ることもありますよ」と話す近さんの優しそうな目元が印象的な取材でした。
通信制高校でライフスキルまで学ぼう「令和関谷学園」開校
2025年4月、関川る〜むに「令和関谷学園」が開校しました。村内初の通信制高校サポート校ですが、“体験学習特化型”という大きな特徴があります。
関川村(合併前の関谷村)は戦後の混乱している時代に、子どもたちの個性と自主性を尊重した実験校が全国で唯一創設されたそうで、現在の「六・三・三制」(小・中・高)のもとになった取り組みが行われました。授業は英語や理科にとどまらず、美術や創作劇などユニークな科目もあり“個性を育てる”ものだったそうです。子どもたちは読み書きや計算などのスキルを習うだけでなく、「自分がどんな人生を歩みたいか」を求めるように育てられたのでしょう。
令和になった現在も、この個性を尊重する気概は「令和関谷学園」に受け継がれます。自分のペースに合わせて設定する時間割、スタッフさんがサポートしてくれる学習活動のほか、木工、写経、料理、薪割り、イベント企画、染め物、公園づくりなど、ライフスキル習得の可能性を秘めていそうなたくさんの体験メニューが用意されています。
「カリキュラムで学習して高卒の資格を取るだけでなく、体験を通じて生徒さん一人ひとりが自分の生きていく術のようなものを学んでくれたらうれしいです」と近さんはおっしゃいます。「自分がこうしたい、なりたい、という気持ちが認められることが、自信につながります」。誰もが人と関わって、ありのままの自分ですごして、時には壁にぶつかって、だんだんたくさんの人とつながり続けていられるようになるのかもしれませんね。
【関川る〜む インフォーメーション】
〒959-3241 関川村大字大島11118-1(旧大島保育園)
TEL 080-8161-9656
月曜日定休、営業は通常営業(10:00〜18:00)と午後営業(13:00〜18:00)があります。
関川る〜むSNSのカレンダーで確認してください。
◆歌うまカフェ(のど自慢大会)
6月14日(土)13:30 〜 16:00 小中高生参加無料、それ以外の方500円(ワンドリンク付)
カラオケはもちろん、一部生ギターにも対応します。
出場希望者は前日までに関川る〜むへ申し込み。観覧のみの方は事前申し込み不要です。
関川る〜むを運営している(一社)えちごせきかわ四季と暮らし協議会では、会員、賛助会員を募集しています。年会費は一口3,000円です。