村上ソウルフードのひとつが鶴岡市内で
「子どものころ、クリームの入った長いフランスパンが大好きでした」「ついつい1本まるごと食べちゃいました」…。“ダイゴ”といえば、そんな思い出いっぱいの方も村上市近郊にはたくさんいるのではないでしょうか。
新しいものが次々にあらわれる食品業界ですが、”なつかしい気持ち”を新たに開発することは不可能に近いことです。
きっとたくさんの人の心に”刺さる”なつかしさ、そして、そこからさらに魅力の磨き上げを続けている「ブーランジェリーダイゴ」さんをご紹介します。
定番のフランスパンは今も大好評
鶴岡市山王町で営業中
ブーランジェリーダイゴは現在、鶴岡で最古ともいわれる山王日枝神社という由緒ある神社を中心として広がった山王商店街の一角にお店を構えています。
山王町は市民有志をはじめ、官民さまざまな人の手によって存続しているミニシアター“まちなかキネマ”のあるところですので、新潟からよく足を運ぶ方も多いかもしれませんね。
鶴岡の方も通勤通学中に立ち寄り、その日の昼食としてパンを求めるそうですが、やっぱり一番人気は定番の、傑作の、あのフランスパン。村上市民の私たちにとっては、自慢のソウルフードですので、なんだか誇らしいですね。
5種類のレギュラーに加えて季節限定フレーバーも
ダイゴの歴史をたずねてみました
お店を切り盛りしているのは、三代目シェフの富樫正貴さん。
高校までは地元ですごし、進学によって上京した後には大学院を経て大手電機メーカーに勤務したという富樫さんですが、もともとの興味の対象は数学。情報処理を学びシステムエンジニアとなってからは、ほかのエンジニアさんのマネージメントをして仕事を進めていく業務をしていたそうです。
そんな富樫さんから、お店のはじまりやご自身の継業まで、時系列でお聞きすることができました。
初代の光春さんは満州での生活を経験しました。戦中戦後の食糧難の時代、日本に帰ってくると「食に関わる仕事がしたい」と一念発起し、村上市内の菓子店で修業へ。
1954年、村上市府屋にお店を構えました。当時は“マントー”という現在のおまんじゅうのような食べ物や和菓子を製造販売していたそうです。
富樫さんの父・光英さんは商社マンなどを夢見ていたそうですが、家業を継ぐため日本菓子専門学校へ進学。そこでパンや洋菓子の製法を学んだことで、お店はパン、和菓子、洋菓子の3分野展開が可能となりました。
1979年には、鶴岡市温海の国道7号沿いに日本海を望む2号店をオープン。定番となったフランスパンをはじめ、たくさんの人気商品が村上・庄内で愛されました。
三代目の富樫さんはシステムエンジニアとしての職を辞し、製菓専門学校で基礎を学ぶところからキャリアスタート。その後、東京都内のパティスリーで製造の現場を肌で知り、職人としての技術や感覚を研鑽する日々に入りました。
2011年にはUターンして三代目として継業。ちょうどその頃、店舗は村上市山居町へ移転し、商品構成も進化と変化を繰り返しました。2019年には現在の鶴岡市に移転し、ダイゴの遺伝子を守りながら、試行錯誤に明け暮れているそうです。
妥協のない試行錯誤を日々続ける三代目シェフの富樫正貴さん
三代目のこだわり「定番」と「革新」
「自家製練乳クリームの入ったさっくりとソフトなフランスパン」という不動の4番打者ともいえる定番商品のあるダイゴですが、その陰には並々ならぬ努力とたゆまぬ探求があります。
数学というひとつの答えに向かっていく思索を好む富樫さんは、パンづくりについても”よりよいもの”というたったひとつの答えに突き進んでいるようです。
生産や流通の変化によって、ダイゴの製品のすべての基本となる小麦もまた変わり続けています。妥協のない選定をするため、富樫さんは生産現場を訪ねたり、全国から評価の高い小麦を取り寄せたりと、試行錯誤を繰り返し繰り返し行ってきたそうです。
「他人が認めたものでも鵜呑みにせず、自分自身が実際に手にしてみてどう思うか」。そんな厳しい材料選びにこそ、職人の面白さがあると聞かせてくれました。
たくさんの人に長い間愛されてきた定番だからこそ、変わってしまう材料を見極め、ダイゴの製品としての印象を決して変えないこと。その中で、材料には”いいもの”を使って製品を届けることを意識し、製品全体をよりよくしていくこと。変えないこと、変えていくこと、外野から一見すると共存しにくいようなコンセプトを追求し続けることが、富樫さんの仕事観の中核にあるようでした。
全国各地の材料について常にインターネットなどで情報収集をしているという富樫さんですが、地元山北地域の名品「オークリッチさんの卵」にも惚れ込んでいるそうで、カスタードクリームやメロンパンで味わうことができるそうです。
菓子パンから本格的なパンまで並んでいます 試作品の文字も…
人気アイテムを深掘りしてみました
二代目・光英さんの時代から続くフランスパン。今でも変わらぬおいしさの陰には、時代に揺さぶられたエピソードも。
新型コロナ禍、クリームづくりで使用していた練乳を扱う問屋さんが閉業するという知らせがありました。設備の老朽化、各種コスト増による採算性の課題など、理由はいくつかあったようですが、なんとか仕入れ継続できないかとの願いにも「ダイゴさんだけのために続けることはむずかしい」という返答があったそうです。
そこで富樫さんは全国各地の練乳を調べ上げ、納得がいきそうなものから取り寄せて試食と試作を開始。その結果、食味が変わることなく製造を続けられています。
さらにはあんパンなどで使用する餡子でも同様のことが起こり奔走。パン屋という仕事には、製造販売することへの注力の前に、材料調達や仕入れという課題が立ちはだかっているそうです。
フランスパンのクリームは、伝統の練乳バタークリームをはじめ、ごまクリーム、コーヒークリーム、チョコレート、あんバターの5種類で、冬季週末はラムレーズンも加わります。
このほか、北海道産の上質な小麦を使用した食パン、ベーグル、コッペパン、カレーパン、バゲット類など、ほっとする味の菓子パンから本格ハードタイプまで揃っていますが、中でも注目すべきはクロワッサンです。
フランス産小麦とバターをぜいたくに使い、時間をかけてていねいに仕込まれた生地は一枚一枚の層に空気のムラがなく、非常に均一な芸術的焼き上がり。食べた時の食感と香りの立ちのぼりがすばらしく、パン好きはもちろん、プロの職人さんもうなるようなおいしさです。
1アイテムごとに富樫さんの職人気質がよく表れているようで、訪ねるたびに新しいパンを食べたくなりますね。
一つひとつ大切に焼き上げられ、パッケージングされたクロワッサン
クロワッサンを割ると生地が均一でムラのない焼き上がり
飽くなき探求が向かう先は
三代続く地域の名店を切り盛りし、なお今も日々パンづくりを突き詰めようとしている富樫さん。
「最近のイチオシは?」をうかがうと、ブリオッシュ生地とタルトタタンをあわせたような”ブリオッシュタタン”や、とてもリッチな仕上がりの”あん生クリームパン”といった新しいメニューを勧めてくれました。
ご自身の探究心だけでなく、地域のお客さまの声からもメニューの考案や改良を続けているそうで、これからのダイゴもとてもたのしみなお店です。
かつては1日に1,000本も焼いていたという定番のフランスパンですが、現在は1日200本弱が限界とのこと。人手の事情もありますが、材料を仕入れるための流通というお店だけではどうにもできない社会課題もあります。
山形県鶴岡市にお店を構えながらも、納得のいく材料を求めて月に1度は新潟市まで自ら仕入れに向かうという富樫さん。
パンづくりに時間も労力も全力で捧げている職人さんだからこそ、これからも納得のいくパンづくりを続けてほしいですね。
新潟ー山形を結ぶ高速道路(朝日温海道路)のミッシングリンク解消時期は未定だそうですが、慣れ親しんだ海岸線はいつも気持ちのよいドライブコースです。
日帰りのドライブで鶴岡市を訪ねた時に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
なつかしいあのフランスパンにまた出会えますよ
予約で受け取ることができます
ブーランジェリーダイゴの製品は鶴岡市内の山王町店で製造販売されていますが、事前の予約注文によって村上市の府屋本店で受け取ることも可能です。
山王町店の営業時間中に、ほしい製品や受け取りたい日にちなどをお伝えください。
受付スタッフの方が料金や府屋本店でのお受け渡し時間について、親切に教えてくれます。
ブーランジェリーダイゴ
山王町店
〒997-0028
山形県鶴岡市山王町3-14 さんのう夢ほっと1階
TEL 0235-26-0800
営業時間 9:00-13:00 ※商品がなくなり次第閉店
定休日 火曜日・水曜日・木曜日・不定休
府屋本店
〒959-3907
新潟県村上市府屋518
TEL 0254-77-2029
営業時間 9:00-18:00 ※商品がなくなり次第閉店
定休日 不定休
ブーランジェリーダイゴHP